No.26. ミュータンス菌、40分間に1回分裂したならば・・・。
むし歯の原因について少し考えてみよう。
これから一般的なむし歯の原因論を紹介するが、ここには大きな間違いがある。
どこが間違っているだろうか?
頭をひねっていただきたい。
「むし歯は、口の中のミュータンス菌が、砂糖を食べて酸を出す。
この酸によって、歯が溶かされむし歯ができる。」
さてお分かりだろうか?
この質問を歯学部の学生にしても正解は10%に満たない。どこが間違いなのだろう?
<この図には大きな間違いが
あるがどこだろう?>
実は、この文章には"歯垢"の言葉が出てこない。
これが正しいとすると、子ども達にとって歯ブラシで除去するものは、
① ミュータンス菌
② 砂糖
③ 酸
のいずれかになる。
しかし歯ブラシで除去するのは歯垢ではないか。
歯垢が原因でむし歯や歯周病が発病する・・・なのに"歯垢"の言葉が見られない。
これは大きな誤りである。
小学生に話をする時には、まず歯垢が悪者であることを伝える必要があるのだ。
そして歯垢を作らないための方法として砂糖の話、歯垢を除去するために歯磨きの話を行っている。
このように整理したほうが、子ども達にはわかりやすい。
ところでミュータンス菌に、最高の条件を与えれば40分間に1回分裂し2個となる。
40分が一世代なのだ。
そして80分後に、再度分裂し4個となる。
さて歯垢1g・・・すなわち1円玉の重さには約10の11乗の細菌が存在する。
この菌数は、ヒトの糞便1gの約3倍の細菌数である。
<むし歯の原因 ミュータンス菌>
ここで、
奥歯の内側を舌でなめていただきたい。
もし、ヌルヌル・ザラザラしていたら、糞便の3倍の菌をなめたことに相当するのだ。
このように話すと、子ども達にうける。
<この歯垢をなめたら・・糞便の3倍!>
ちょっとここで単純計算してみた。
1個のミュータンス菌が40分に一度分裂すると仮定すると、
1g(10の11乗)になるのに約24時間40分。
この調子で増加すると、1kgになるのに31時間。
そして、1tになるのに38時間。
さらにジャンボジェット機は180tだから、約43時間。
何と!世界最大級のタンカー(バティラス号 フランス)は、
全長400mで54万2,400トンであるから、50時間後に達成することになる。
これだけの細菌となると、顎がはずれるどころではない。
<ミュータンス菌がジャンボジェットになるのは48時間。>
<世界最大のタンカーの重量になるのに、
50時間しかかからない・・・・。>
でもどうして実際には起こらないのか?
これは単なる数字のマジクだ。
この理由。
それはミュータンスのエサである砂糖がそれだけ存在しないためである。
それだけ砂糖は悪者なのだ・・・。
たった1個のミュータンス菌からでも、話はどんどん広げられる。
モンゴル健康科学大学 客員教授 岡崎 好秀 先生
(前 岡山大学病院 小児歯科 講師)
子供も楽しめる保健指導情報を 「Dr. 岡崎の口の中探検」にて好評連載中。
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