No.25. 喫煙と歯周疾患
2003年に健康増進法が施行されて以来、禁煙に関する新聞記事がよく見られる。
全国的にも男性の80%が喫煙者だったが、最近では40%程度にまで低下している。
もちろん、歯科医師も禁煙された先生が激増している。
<タイで販売されている日本のタバコ、マイルドセブン>
それは歯科医師自身の健康のためばかりでなく、喫煙は歯科疾患を増加させる大きな要因でもあることがわかってきた。
まず、タバコに含まれるニコチンの作用により、末梢血管が収縮する。
そうすると血液循環が悪くなり、歯周病になりやすく、また治りにくい。
だから「タバコを止められなかったら、歯周病が治らないから、もっと上手な先生の所へ行ってください。」とまで言われる歯科医師もいる。
<喫煙習慣は、歯グキの血流不足を引き起こすため、歯周病になりやすく、
また治りにくい。>
また歯肉には、メラニンの沈着により黒ずむ。
さらに、人工歯根を顎の骨に植えるインプラント手術の成功率は、喫煙者では約10%低下するといわれている。これも血流が悪いことが失敗の原因になるためだ。
そこで、喫煙者には、インプラントの治療を行わないよう講習会では指導されている。
患者さんには、禁煙してからインプラント手術を行うことが常識化している。
さて、子どもにおいては、またタバコの煙を、二次的に吸い込む副流煙によりむし歯が2倍になると言われている。
また子どもに多い前歯の外傷で歯が抜けたものを、歯科医院で固定しても、血流が悪ければ予後も悪くなるに違いない。
そう考えれば、保護者には禁煙指導も必要である。
インドにおいては、噛みタバコのせいで、口腔ガンがもっとも多い。
<副流煙により子どものむし歯が2倍に増える。>
さて、ここに1枚の写真がある。
これはイギリスBB放送のインターネットで公開されている有名な写真である。
一見すると、一人は若々しい女性、もう一人は年配の女性に見える。
しかし、この2人は40歳前半の双子の姉妹である。
どうして、これだけ差が現れたのだろう?
これは20年におよぶ喫煙習慣だと言う。
一般に、タバコの煙には一酸化炭素が含まれるが、この濃度は自動車の排気ガスに等しい。
さて一酸化炭素は、血液中のヘモグロビンと結合するが、その能力は二酸化炭素の約240倍である。
したがって、体の表面では、常に酸素不足の状態となり、これが早期に老化現象を引き起こす原因となる。
<これは40歳の双子であるが、 どうしてこれだけ違うのだろう?>
そう言えば、選手生命の長いプロ野球選手は、タバコを吸わない。
巨人の工藤投手しかり、桑田投手しかり、大リーグで活躍中のイチロー選手はもちろんである。
ある週刊誌にヤンキースの松井選手が、某女優を喫煙者ということで交際を断ったと書かれていた。
1日に20本程度の喫煙者では、非喫煙時でも一酸化炭素と結合したヘモグロビンは3~6%であり、喫煙直後には10%を越えることもある。
ちなみに、富士山に継ぐ、日本の高峰である南アルプス剣岳の山頂での動脈の酸素飽和度は、91%となり、喫煙直後の値に匹敵する。
標高0mと3000mの酸素濃度の違いで、スポーツを行った場合、どちらが勝つかは明白である。
選手生命の長いスポーツ選手が、禁煙する理由がよくわかる。
<選手生命の長い選手は、タバコを吸わない。 体内の酸素量が減少しては、
もはや勝負は明白である。>
モンゴル健康科学大学 客員教授 岡崎 好秀 先生
(前 岡山大学病院 小児歯科 講師)
子供も楽しめる保健指導情報を 「Dr. 岡崎の口の中探検」にて好評連載中。
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