No.20. むし歯の季節?
最近、軟らかい食べ物が増加したことで、歯周病が増えたと言われている。
これは人間のみならず、サルの世界にも言えることだ。
歯ごたえのある自然のエサと、加工された軟らかいエサを食べているサルでは、
軟らかい加工されたエサを食べているほうが、歯肉の状態が悪く、むし歯も約40パーセント多いとする調査がある。
サルは歯を磨かないことからも、両者の違いは、食べ物の差であることがわかる。
<食生活の変化で動物達の口の中にも変化が見られ、
むし歯や歯周病が増加している。>
さて、野生のニホンザルは、主として木の葉や芽・果実・樹皮などを食べている。
これら繊維質を多く含んだ硬いエサは、口の中の汚れを取り除き、清潔にする働きがある。
また、よく噛むことで唾液の量が増え、歯の汚れも洗い流される。
まさに硬い食べ物は、天然の歯ブラシなのだ。
余談ではあるが、サルにスイカを与えると種・皮・実の、どの部分から食べるだろう?
驚くことにサルは、種から食べ始めるそうだ。まるでヒトと反対ではないか。
サルは、体のためになる食物を本能的に知っているのだ。
ところで、ある獣医師の話では、動物園で飼育されているサルには、
むし歯になりやすい季節があるそうだ。
さてその季節とは、いったい何だろう?
読者の方にも考えていただきたい。
さまざまな方に聞いてみた。
まず「春」という回答の理由を列挙してみよう。
①暖かくなるので食欲がわく。
②草木が萌えてくる。
③冬には食べ物がなかった。
「夏」という理由。
①暑いため食欲が低下する。
②水分ばかり飲む。
次に「秋」の理由。
①冬に備えて食いだめをする。
②実りの秋で、たくさんの食べ物がある。
③食欲の秋。
「冬」と回答した理由。
①冬眠するので唾液の量が減る。
②口を動かさないので、歯が汚れやすい。
さまざまな回答があるものだ。
では正解はというと、春と秋である。
気候が良いため、多数の行楽客が動物園を訪れる。誰もが自分だけなら・・、少しだけなら・・と、甘いお菓子を与えてしまう。
これが歯が汚れる原因だ。親切心がむし歯を引き起こすことがわかる。
そう言えば、サルがむし歯になる理由。子どものむし歯の原因と同じではないか。
さて、このクイズを小学三年生を対象に行った。
ほとんどの子ども達が、「春」と「秋」にむし歯が増える理由について納得した。
しかし、これに納得できない子どもがいた。
その理由を聞いてみた。
「夏は、暑いからジュースやコーラーをたくさん飲むから!」と言う回答であった。
確かに清涼飲料水は、むし歯の原因となる。
また別の子が、「冬」だと言った。
その理由は、「冬は寒く外で遊ばないで、家でコタツに入ってファミコンをします。ゲームをしていると、つい何かを食べたくなってお菓子を食べてしまいます。」
なるほど!思わず納得してしまった。
むし歯の原因には、さまざまな理由があるものだ。
さてあなたの回答は、どうだったろうか?
<さて、親も良かれと思い、子どもに甘いお菓子を与えていまいか?>
モンゴル健康科学大学 客員教授 岡崎 好秀 先生
(前 岡山大学病院 小児歯科 講師)
子供も楽しめる保健指導情報を 「Dr. 岡崎の口の中探検」にて好評連載中。
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