No.9. 宇宙飛行士と歯の話
1957年旧ソ連がスプトーニク一号を打ち上げた時から、
人類の宇宙開発の歴史は始まった。
あれから四〇年あまり・・・。現在では、毎年のように日本人宇宙飛行士が、
スペースシャトルに搭乗し宇宙へ飛び立っている。
遥か宇宙の彼方への旅。想像するだけでロマンがかきたてられる。
さて宇宙飛行士は、むし歯があるとなれないといわれている。
どうしてだろうか?
宇宙では、むし歯があると歯が痛くなりやすいのだ。
激痛に襲われたならば、任務どころではあるまい。
そもそも歯が痛くなる理由は、むし歯が進み神経の炎症によってガスが出る。
この圧力によって痛みを感じる。
これは、火山の噴火にたとえることができる。
すなわちマグマの圧力が高まると、地質が薄いところに噴火する。
むし歯で穴があいた部分が噴火口なのだ。
歯の治療は、地質の弱いところを補強することに他ならない。
宇宙飛行士の毛利衛氏は、小さなむし歯が四本あり治療されたそうだ。
どうやら小さなむし歯であれば大丈夫なようだ。
宇宙で歯が痛くなる理由として、気圧が低くなると相対的に歯の内部の圧力が高くなる。
空気は五〇〇〇メートル上がるごとに、半分になる。
ちなみに宇宙服の中は、〇.三気圧だそうだ。
だから歯が痛む。
これは、飛行機でも同じだ。
飛行中は、約二〇%気圧が低下する。
その影響で、スナック菓子の袋が膨れたり、封を開けたシャンプーも漏れだす。
だから、パイロットやスチュワーデスにとって、歯の治療は重要なのだ。
航空会社の広報室に問い合わせてみた。
地上でわずかな痛みがあれば、上空ではさらに痛くなる。
国際線などの長時間の飛行においては、かなりの苦痛となる。
ひどい時は乗務員の交代もありえるそうだ。
それでは、もし宇宙で、親知らずでも痛みだしたらどうするのだろう?
まず痛み止めの薬を飲む。
それでも効かなかったら、他の宇宙飛行士が歯を抜くそうだ。
そのため宇宙飛行士は、歯を抜く訓練までしているのだ。
では、総入れ歯なら宇宙飛行士になれるだろうか?
答えは、ノーである。
NASAの規定によると、もし入れ歯が壊れても、普通食を噛み、明確に発音できることが不可欠なのだ。
いつの日にか、誰もが宇宙旅行を楽しめる時代が訪れるだろう。
その時に、困らない歯を維持したいものだ。
おまけの話。
元軍医から聞いた飛行兵と歯痛の話題。
片道だけの燃料を積んで飛び立った特攻隊機。
ある隊員が、歯痛のため基地へ引き返してきた。
治療材料にもこと欠いていた時代、歯を抜いて再び飛び立っていったとのこと。
気の毒に。戦争とは、かくも残酷だ。
モンゴル健康科学大学 客員教授 岡崎 好秀 先生
(前 岡山大学病院 小児歯科 講師)
子供も楽しめる保健指導情報を 「Dr. 岡崎の口の中探検」にて好評連載中。
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